マルてんBlog

MARS MARKET店長ブログ。A.S.H.モーターオイルの解説や趣味・日常のことを徒然なるままに...。

マルてんオイル知識<7>オイルの差を判断するには?

5986bdc5.jpg世の中には実に色々なオイルが出ていて、容器やカタログ、広告などを見ても、どれも良さそうなことが書いてあるし....。
化学合成油、鉱物油、エステル、VHVI....と、いくらベースオイルや配合されたものを列記されても、レシピだけ見せられて美味しいかどうかを判断しろって言われているようなもので(笑)、オイルの本当の性能を知るのは容易なことではありませんよね。

ただ単に「化学合成油」だからと言って、全ての製品の性能が鉱物油より優れている!...といえるのか?というと、混合させる添加剤の相性や温度管理、機関内に使われる材質への攻撃性など、かなりの幅でメーカー間にノウハウのバラつきがあるようで、一概に化学合成イコール”いいオイル”だと限りません。

それでは、どうやってオイルの良し悪しを判断すればよいのでしょうか?
少なからず「走る」ということに重きをおいている方々には、「油温」「油圧」と距離(時間)の関係を見ていただければ、最も判断しやすいと思います。
これには当然、油温計と油圧計を取付けることが必要ですが、もしどちらか一つということであれば、油圧計を設置することをお勧めします。

極端な言い方ですが、基本的には、油温が上昇すると油圧は下がります。
エンジン回転数を上げている時間が長くなるほど、油温は上がり、油圧は低下してくるのです。
油圧の低下は、エンジン摺動部(クランクシャフト・カムシャフト・ピストンなど)の油膜が薄くなっていくことにつながります。高回転で走る時間が長いスポーツ走行では、この油圧低下率をいかに少なくしてやれるのかが、”いいオイル”の条件となるのです。

恐らく、皆さんがクルマを使用する場合、通勤だとか、行きつけのサーキットだとか、ある程度、一定の条件で繰り返して走る場所があるのではないでしょうか。
その一定の使い方の中で、常に油温と油圧をチェックしつつ様々なオイルを交換していると、おのずとその差が分かってくると思います。

例えば、大抵のエンジンは、油温80℃を適正油温として設定して、各クリアランスなどが決定されているので、それ以上の温度となると、どんどん”熱ダレ”(熱によるパワーダウン)の方向に進んでいきます。そこで油温が80℃になった時に油圧計がどこをさしているか、また冷えた時にはどこをさすのか、それぞれの温度のポイントで指針の動きをじっくり観察し、同時に距離(ラップ数)などを頭に入れておくとよいでしょう。

最初はきっちりと油圧がかかっていたオイルでも、例えば3000〜4000kmで”ガクン”と急激に油圧が落ちることがあれば、オイルの中でポリマーが壊れ、飽和状態になってしまったことが考えられます(あまり良くないエンジンコンディションによっては、ガソリン希釈がおこっているのかもしれないので、一概に決め付けは出来ないのですが)。
以前にもご説明しましたが、A.S.H.の場合、粘度低下を引き起こすポリマー使っていないので(一部のオイルに必要最低限を使っていますが)、こういった”ガクン”という落ち方はしません。エンジンコンディションさえ整っていて、メーターを使ってチェックしていれば、毎日の通勤と月に1〜2度のサーキット走行会で、FSE E-Specを15000km交換なしで使っている方もいらっしゃるほどです。

メーターを付けることで、温度上昇の度合いの比較や、同じオイルのグレードの違いを試すことも出来ますので、色々な噂や、口コミに惑わされることなく、自分のクルマに合った、自分なりのオイル選びをすることが出来ます。やはり性能の違いは、感覚より数値がはっきりと物語るのです。
パワーアップや、動きが楽しいブースト計の取付よりも先に、チューニングの第一歩として油温計・油圧計を先に付けていただきたいものです。

先日、今年初のスイカを買いましたが、昔はスイカっていうと、店頭で散々スイカを叩いた挙句、瓜みたいな味しかしない「はずれ」があったもんですが、最近、「はずれ」にあたらなくなったのは、畑や出荷時から糖度計を使っていて、正確に甘さがわかっているから?....なんていうのはこじつけ過ぎですかね!?

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マルてんオイル知識<5>「ならし運転」って必要?(その1)

57a44696.jpg今回からちょっとタイトル変えました。
これまでの「”聞きかじり...”だと、無責任に感じるし、お前の主観だって入ってるんだからおかしい」と、友人に指摘されて、素直に「それもそうか?」ということで....(笑)。

先日、最近めでたく新車をご購入された方から、「ならし運転」(以下「ならし」)の必要性についてご質問をいただきました。
今のご時勢で、VWパサートの新車なんて羨ましい限りですが、オイルの選び方同様、「ならし」も昔から色々な説が流れているので、基本的な考え方から説明させていただきたいと思います。

結論から言うと、「ならし」は確実に必要です。
「最近のクルマにならしは必要ない」、「最初からガンガン回した方が高回転が回るようになる」という人がいますが、その根拠も同時に考えてみたいと思います。

私ごとですが、以前、某高級輸入車ディストロビューターの広報車の育成ドライバーという仕事をしていたことがあります(自動車メーカー系「業界」では、クルマを仕上げることを「育成」と言います)。
皆さんご存知の通り、各自動車メーカーは、ジャーナリストや雑誌編集者、著名人などに貸し出して、評価を受ける「広報車」というのを用意しています。
この試乗評価によって、売れ行きや、カーオブザイヤーなども決まります(もっとも、それだけの要素ではない色々な含みがありますが......苦笑)ので、メーカーとしては、”ちゃんとしたクルマ”をジャーナリスト等に提供したいわけです。
ファミリーカーやミニバンでももちろんですが、特に走りを重視したスポーツモデルでは、工場での組立段階からバランスのいいパーツを厳選し、エンジンも台上(ベンチ)で性能を確認します。その後、選りすぐりのパーツで組み上げられた車両は、慎重なならし運転の行程に入ります。
もちろん、駆動系や操作部の異音や風切り音など、各部の確認をしながらとなりますが、先述の某高級輸入車の「ならし」の場合は、大体次のようなものでした。

・60km/hでの定速走行 100km
・80km/hでの定速走行 100km
・100km/hでの定速走行 100km
・40〜60km/h程度で一般道 200km(サスペンションを徐々に揉む)
・点検整備(不具合部品と、油脂類交換)
・40〜60km/h程度でワインディング走行と高速巡航(制限速度) キックダウン避け 200km
・60〜100km/h程度でワインディング走行と高速巡航(制限速度以上...一般的な速度.....ん?)キックダウン使用 200km
・ワインディング全開&高速全開走行(制限速度の2倍以上...ん?んんんっ!?) 100km
・合計1000km走行後、点検整備と不具合対策
※この他、各段階で許容エンジン回転数なども細かく設定がありました。

一応「ならし」の行程としては、ここで終了ですが、本来ならもっと「ならし」の距離を稼ぎたいところではありました。
もちろん、途中で発見された不具合や、部品交換などが発生すれば、もっと距離は伸びていきます。
皆さんも認識されているかとは思いますが、「ならし」とは、エンジンだけではなく、駆動系や足回り、操作系、ブレーキ系など、作動する部分全てに関わってきます。
いいクルマを仕立てるためには、メーカーでも”最低限”ここまでの「ならし」を行っているのです。

残酷なことを言ってしまえば、一般の方が手にする車両は、ある誤差範囲に入っていれば出荷されてしまう車両であり、”当たり外れ”も分からない状態です。
メーカーと同じことを一般の方が通勤やドライブをしながら行うのは大変なことでしょうが、このような事例からも、一般の方であれば”より”「ならし」運転が必要だということをご理解いただきたいと思います。

引き続き、その<2>で、オイルという視点から見た「ならし」についてふれてみます。

マルてんオイル知識<6>「ならし運転」って必要?(その2)

def60b36.jpg前回に引き続き、「ならし」の話です。

今回は、”オイル”という面から「ならし」ついて考えてみましょう。
「ならし」を行っている人でも、ほとんどは、新車時に入れられていた”工場充填油”で1000kmまで...といった方法をとっていると思います。
常に徹底的なコストダウンを模索している自動車メーカーが、工場で注入するオイルは、当然ながら必要最低限のものであり、お世辞にも油膜強度が高いとは言えないものです。
「だからこそ1000kmで交換している!」と訴えたい方もいらっしゃると思いますが、実は、油膜の強いオイルを「ならし」の段階から使用することが重要なのです.....。

物体と物体の接点には必ず摩擦がおこります。
これにより、その物体は磨耗していくのですが、この磨耗の仕方をより平滑にする作業が「ならし」であり、その「ならし」の良し悪しを決めるのがオイル性能なのです。

クルマに多く使われる金属は、常に何らかの接触面を持っていますが、金属表面は、一見すると平滑に研磨されているように見えても、ミクロ(今やナノの世界か?)で見ると、沢山の切削痕や材質の荒れがあり、まるでグランドキャニオンのようにキズだらけの状態です。
このため、接触面というのは、見かけの面積より実に小さい接点でしか触れ合っていないのです。
この小さい接点を専門的には「真実接触面積」と呼びます。

その面全体にかかる荷重や、材質によっても異なりますが、クルマの素材では一般的な「軟鋼」の平面を例にすると、見かけの接触面積の数百分の1〜数万分の1といった、ほんのちょこっとの「接点」でしかないのです。
当然、この凹凸の大きさは、機械加工された直後が一番大きく、使われるにしたがって、接点同士がお互いにぶつかり合って削られていき、滑らかな表面へと近づいていくのです(左図は、金属表面同士の接点を拡大したイメージで、触れ合う金属同士は、お互いに削れたり、欠けたりしています....。A.S.H.のカタログより抜粋)。

実際は、ここにオイルがフローティング状態で入りますが、莫大な荷重もかかりますので、お互いの凸部が接触しないということにはならず、ぶつかりながら滑らかな面を作っていきます。
....というと、やはり...「早く滑らかな面を作るには、油膜の薄いオイルでガンガンぶつけ合ってもらった方がよいのでは?」という見解もあるかと思います。
「最初からガンガン回した方がいい」という説は、こうした考え方から来ているのかもしれません。

しかし摩擦量が増えると、当然、温度が上昇しますよね?
そこに油膜が薄いオイルを使用すると、温度上昇を抑える力が少なく、高熱で膨張した(大きくなった)状態で金属同士がぶつかり合うこととなり、欠けや切削部が必要以上に大きくなってしまうのです。
一度、大きな亀裂やキズを負ってしまうと、それ以降もその部分がキッカケとなり、割れや欠けが大きくなっていき、ボディーブローのように金属を侵していくのです。
こういった理由から、「ならし」の時からこそ、油膜のしっかりとしたオイル(冷却効果が高い)を使わなければならないのです。
さらにエステルの場合には、電気的に金属に吸着する力があり、使用を重ねるにしたがって、金属表面にエステルの皮膜をつくりあげていきますので、亀裂や欠けを防ぐ力はより強固なものになるのです。

以上、「ならし」の必要性とオイルの重要性について、ご理解いただけましたでしょうか?
こういったことを考えると、「ならし」の件だけでなく、「安いオイルをマメに換えていれば間違いない!」といったオイルの俗説の誤りにも気がつく方も多いのではないでしょうか?

ご質問の方には、クドクドと長文な回答になってしまいましたが(既にご本人には回答済)、「ならし」について考えると、オイル管理全般にも結びつくことを 自分でもあらためて発見しました。

その他、オイルに関するご質問などがありましたら、マルスマーケット内の「お問合せ」からどうぞ。

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SSDSに行ってきました!(その1)

a4d3b4fb.jpg一昨日、4月に引き続き、SSDS(ドライビングスクール)に行ってきました。
今回は、あえて雨を見越して、クルマを操る上での基礎の基礎である”Jターン”、”定常円走行”、”スラローム”だけを体験するために、関越スポーツランドを一日占有して行われました。
参加者の皆さんは、サーキットを長年走っている人や、初めてクルマでスポーツする人など様々....。
それでも各個人のレベルに合わせて、斉藤聡先生(ジャーナリスト、日本カーオブザイヤー選考委員)と、渋谷和義先生(元自動車メーカーの最高ランクテストドライバー)が、丁寧に教えてくれるから、ためになること請け合いです。
今回は、私めも初参加の方のロードスターをお借りして参加(ヒドっ!)、さてさて上手く走れるか、非常に心配....。

SSDSに行ってきました!(その2)

0057186f.jpgエビスでも上手に走っていたGT3の生徒さん、さすがにウエット路面ではパワーを持て余し、アクセルコントロールが難しそう。
「色々な方法でスピンしたので、クルマの動きが分かった」というコメントが、今回のこのスクールの全てを物語っています。
こんなにスピンする機会はそうそうないですからね!