98f13814.jpgまたうっかり、ご無沙汰してしまいました。

前回のブレーキフルードの選び方は、意外に多く「参考になった」という方がいらっしゃいました。
では、肝心のエンジンオイルの粘度グレード選びは??....という旨のお問合せも頂きましたので、今回は引き続きエンジンオイルの粘度選びについて、ご説明したいと思います(粘度グレードの表示の説明については、いろんなサイトで説明が出ているので、ここでは省略します)。

粘度グレード選びには、皆さんもいろいろな要素や「説」があって困っているのではないかと思いますが、まずは、取扱説明書に書いてあるグレード(5W-30など)を基準にするのが一番です。

これをベースに、スポーツ走行が多いのなら、油膜強度を上げるために、10W-30、10W-40...とグレードを上げていけばいいですし、より軽く省燃費性を確保したいというなら、0W-30、0W-20と下げていけばいいと思います(ただし下げる場合には、低温でも油膜をしっかり確保できるオイルを選ぶことが必要で、下げる時ほど安いオイルは避けた方が無難です)。

もう一つ、判断基準をあげるとすれば、エンジンのピストンスピードを考慮するといいでしょう。
量販店のオイル売場などで、ただ単純に「2000cc以上のセダンに最適!」なんて、排気量でグレードを分けていたりするポップを見て、ちょっと「?」と思ったことはないですか?(これはスポーツ走行などをしない一般ドライバーに対して、分かりやすいようにしているので、問題ないのですが...)

気になるところというと....。
例えば、同じ2500ccのエンジンでも4気筒も6気筒もある訳です。
この違いは、エンジン搭載スペースの都合や、コスト面、性能追求の考え方など、メーカーの思想や都合で決められていますが、皆さんご存知の通り、実質的には「ボア×ストローク」に大きな違いが出てきますよね。

一般的には、気筒数が少ない方がロングストロークエンジンになり、どうしてもピストンスピードが上昇してしまいます。
ピストンスピードは下記の式で求められますが、
<RPM(毎分回転数) ÷ 60(一秒間の回転数) x ストローク(行程) x 2(クランク1回転で1往復) = 平均ピストンスピード>
一例として、2500cc 6気筒のN52B25A(ボア82.0×ストローク78.8)と、同じく2500cc 4気筒エンジンのL5-VE(ボア89.0×ストローク100.0)を6000rpmで比較してみましょう。

耐久性を重視した市販車エンジンの場合、ピストンスピードは20m/秒以内に抑えるのが一般的といわれていますが、6気筒のN52B25Aエンジンは15.7m/秒というスピードなのに対し、4気筒のL5-VEエンジンの場合は、ジャスト20.0m/秒とギリギリの数値となってしまいます。
これは、バイクではもっと顕著で、同じ"CB400"でもスーパーフォア(4気筒)は、9.8m/秒、SS(単気筒)は16.3m/秒(共に7000rpm時)となります。

ロングストロークエンジンが回らない(回せない)というのは、こういう理由から来ていますし、現在のV8規定以前のF1が、V10だのV12だのと気筒数を増やしていたのも、1シリンダー当たりのピストンスピードを抑え、回転数を上げて行きたいからに他なりません(その時でさえ、35m/秒にも達していたF1!19,000rpm規制!?の現V8エンジンは、いったいどのくらいのスピードなんでしょーか?...ボア×ストロークが公表されていないんですよねぇ)。

ここでオイルについて考えると、当然、ロングストロークエンジンの方が、オイルにとってキツイ状況になっています。
ピストンスピードが上がると、ジャーナルにかかる面圧も高くなり、それだけ鋭い勢いでオイルを掻き切ろうとする作用が働きますので、同じ排気量でもロングストロークエンジンは、より油膜の強いエンジンオイルを選ぶ必要があるのです。

こうしたことから、ロングストロークエンジンでは「オイルを低粘度にして、粘性抵抗を減少させて回転数を稼ごう!」といったことは、安易にはお勧めできません。粘度グレードを落とすのであれば、しっかりとした油膜を確保し続けられるオイルを選んでください。
あ、マルチシリンダーエンジンだって、油膜維持性能が強いことに越したことはないんですよ(笑)。
多気筒のほうが、より粘性が低いオイルが使用できるってことなのです。

なんだか、ただの一般論になってしまいましたが、エンジンのストロークによる粘度の選び方...というオイル選びの一端を大まかに説明してみました。 ご参考になりましたでしょうか?

また、何かご質問がありましたら、MARS MARKETのお問合せからどうぞ。
http://www.mars-plan.com/info.html