def60b36.jpg前回に引き続き、「ならし」の話です。

今回は、”オイル”という面から「ならし」ついて考えてみましょう。
「ならし」を行っている人でも、ほとんどは、新車時に入れられていた”工場充填油”で1000kmまで...といった方法をとっていると思います。
常に徹底的なコストダウンを模索している自動車メーカーが、工場で注入するオイルは、当然ながら必要最低限のものであり、お世辞にも油膜強度が高いとは言えないものです。
「だからこそ1000kmで交換している!」と訴えたい方もいらっしゃると思いますが、実は、油膜の強いオイルを「ならし」の段階から使用することが重要なのです.....。

物体と物体の接点には必ず摩擦がおこります。
これにより、その物体は磨耗していくのですが、この磨耗の仕方をより平滑にする作業が「ならし」であり、その「ならし」の良し悪しを決めるのがオイル性能なのです。

クルマに多く使われる金属は、常に何らかの接触面を持っていますが、金属表面は、一見すると平滑に研磨されているように見えても、ミクロ(今やナノの世界か?)で見ると、沢山の切削痕や材質の荒れがあり、まるでグランドキャニオンのようにキズだらけの状態です。
このため、接触面というのは、見かけの面積より実に小さい接点でしか触れ合っていないのです。
この小さい接点を専門的には「真実接触面積」と呼びます。

その面全体にかかる荷重や、材質によっても異なりますが、クルマの素材では一般的な「軟鋼」の平面を例にすると、見かけの接触面積の数百分の1〜数万分の1といった、ほんのちょこっとの「接点」でしかないのです。
当然、この凹凸の大きさは、機械加工された直後が一番大きく、使われるにしたがって、接点同士がお互いにぶつかり合って削られていき、滑らかな表面へと近づいていくのです(左図は、金属表面同士の接点を拡大したイメージで、触れ合う金属同士は、お互いに削れたり、欠けたりしています....。A.S.H.のカタログより抜粋)。

実際は、ここにオイルがフローティング状態で入りますが、莫大な荷重もかかりますので、お互いの凸部が接触しないということにはならず、ぶつかりながら滑らかな面を作っていきます。
....というと、やはり...「早く滑らかな面を作るには、油膜の薄いオイルでガンガンぶつけ合ってもらった方がよいのでは?」という見解もあるかと思います。
「最初からガンガン回した方がいい」という説は、こうした考え方から来ているのかもしれません。

しかし摩擦量が増えると、当然、温度が上昇しますよね?
そこに油膜が薄いオイルを使用すると、温度上昇を抑える力が少なく、高熱で膨張した(大きくなった)状態で金属同士がぶつかり合うこととなり、欠けや切削部が必要以上に大きくなってしまうのです。
一度、大きな亀裂やキズを負ってしまうと、それ以降もその部分がキッカケとなり、割れや欠けが大きくなっていき、ボディーブローのように金属を侵していくのです。
こういった理由から、「ならし」の時からこそ、油膜のしっかりとしたオイル(冷却効果が高い)を使わなければならないのです。
さらにエステルの場合には、電気的に金属に吸着する力があり、使用を重ねるにしたがって、金属表面にエステルの皮膜をつくりあげていきますので、亀裂や欠けを防ぐ力はより強固なものになるのです。

以上、「ならし」の必要性とオイルの重要性について、ご理解いただけましたでしょうか?
こういったことを考えると、「ならし」の件だけでなく、「安いオイルをマメに換えていれば間違いない!」といったオイルの俗説の誤りにも気がつく方も多いのではないでしょうか?

ご質問の方には、クドクドと長文な回答になってしまいましたが(既にご本人には回答済)、「ならし」について考えると、オイル管理全般にも結びつくことを 自分でもあらためて発見しました。

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