57a44696.jpg今回からちょっとタイトル変えました。
これまでの「”聞きかじり...”だと、無責任に感じるし、お前の主観だって入ってるんだからおかしい」と、友人に指摘されて、素直に「それもそうか?」ということで....(笑)。

先日、最近めでたく新車をご購入された方から、「ならし運転」(以下「ならし」)の必要性についてご質問をいただきました。
今のご時勢で、VWパサートの新車なんて羨ましい限りですが、オイルの選び方同様、「ならし」も昔から色々な説が流れているので、基本的な考え方から説明させていただきたいと思います。

結論から言うと、「ならし」は確実に必要です。
「最近のクルマにならしは必要ない」、「最初からガンガン回した方が高回転が回るようになる」という人がいますが、その根拠も同時に考えてみたいと思います。

私ごとですが、以前、某高級輸入車ディストロビューターの広報車の育成ドライバーという仕事をしていたことがあります(自動車メーカー系「業界」では、クルマを仕上げることを「育成」と言います)。
皆さんご存知の通り、各自動車メーカーは、ジャーナリストや雑誌編集者、著名人などに貸し出して、評価を受ける「広報車」というのを用意しています。
この試乗評価によって、売れ行きや、カーオブザイヤーなども決まります(もっとも、それだけの要素ではない色々な含みがありますが......苦笑)ので、メーカーとしては、”ちゃんとしたクルマ”をジャーナリスト等に提供したいわけです。
ファミリーカーやミニバンでももちろんですが、特に走りを重視したスポーツモデルでは、工場での組立段階からバランスのいいパーツを厳選し、エンジンも台上(ベンチ)で性能を確認します。その後、選りすぐりのパーツで組み上げられた車両は、慎重なならし運転の行程に入ります。
もちろん、駆動系や操作部の異音や風切り音など、各部の確認をしながらとなりますが、先述の某高級輸入車の「ならし」の場合は、大体次のようなものでした。

・60km/hでの定速走行 100km
・80km/hでの定速走行 100km
・100km/hでの定速走行 100km
・40〜60km/h程度で一般道 200km(サスペンションを徐々に揉む)
・点検整備(不具合部品と、油脂類交換)
・40〜60km/h程度でワインディング走行と高速巡航(制限速度) キックダウン避け 200km
・60〜100km/h程度でワインディング走行と高速巡航(制限速度以上...一般的な速度.....ん?)キックダウン使用 200km
・ワインディング全開&高速全開走行(制限速度の2倍以上...ん?んんんっ!?) 100km
・合計1000km走行後、点検整備と不具合対策
※この他、各段階で許容エンジン回転数なども細かく設定がありました。

一応「ならし」の行程としては、ここで終了ですが、本来ならもっと「ならし」の距離を稼ぎたいところではありました。
もちろん、途中で発見された不具合や、部品交換などが発生すれば、もっと距離は伸びていきます。
皆さんも認識されているかとは思いますが、「ならし」とは、エンジンだけではなく、駆動系や足回り、操作系、ブレーキ系など、作動する部分全てに関わってきます。
いいクルマを仕立てるためには、メーカーでも”最低限”ここまでの「ならし」を行っているのです。

残酷なことを言ってしまえば、一般の方が手にする車両は、ある誤差範囲に入っていれば出荷されてしまう車両であり、”当たり外れ”も分からない状態です。
メーカーと同じことを一般の方が通勤やドライブをしながら行うのは大変なことでしょうが、このような事例からも、一般の方であれば”より”「ならし」運転が必要だということをご理解いただきたいと思います。

引き続き、その<2>で、オイルという視点から見た「ならし」についてふれてみます。